不動産業界においては、物件の成約率を高めるために日々さまざまな工夫が行われていますが、その中でも近年注目を集めているのが、ホームステージングと呼ばれる手法です。住宅の印象をアップさせ、購入意欲を高めるのに効果があるとして人気急上昇中の販売戦略となっています。

ホームステージングとは、不動産販売において住宅の内部に家具や小物、照明などを配置して、空間演出を行うことをいいます。具体的なやり方としては、寝室にはベッドを、ダイニングにはテーブルを置いたりするほか、壁に絵画を掛けたり、室内の各所をお花で飾ったりして彩りを添えます。また、バスルームにアメニティグッズを置いたりしてあたかも人が実際に生活しているかのように見せることもあります。
この手法は、主として中古住宅の売買を行う際に採用されます。というのも、新築住宅の場合はモデルハウスあるいはモデルルームにおいて同様の演出を行うことができるからです。もちろん、新築の建売住宅などで採用されることもあります。いわば、ホームステージングは「売ろうとしている住宅そのものをモデルハウス化する」手法であるということになります。
このような手法は、中古住宅の流通量が非常に多い欧米ではすでに広く普及しており、売り上げアップのための効果的なテクニックとして評価が定着しています。実際、アメリカではホームステージングを行って販売した物件は行わなかった物件に比べて売却までに要する期間が平均して約半分になり、成約価格も希望価格より6%以上高くなったという統計データがあります。こうしたことから、わが国でもその重要性と有効性が認識され、積極的に採り入れる事業者が増えてきたのです。
こうした演出を行うことによってメリットは、何と言っても物件の視覚的な印象を向上させることです。たとえ優良な物件であっても、剥き出しの床やカーテンのかかっていない窓、がらんとした室内空間というものはどこか冷たい印象を与えます。しかし美しくコーディネートされたインテリアや自然の優しさを感じる観葉植物などが配されていれば、内覧者にくつろぎややすらぎなどを感じさせ、購入意欲を高めるのに役立ちます。また、広さや間取りから潜在的顧客の家族構成などを考え、それに合わせた演出を行えば、購入後に送るであろう生活をイメージさせやすいというメリットもあります。
ホームステージングには専門の事業者が存在し、それぞれ演出の手腕を競っています。各社のウェブサイトには事業の概要紹介や過去の実績などが紹介されているので、依頼する際の参考にすることができます。