不動産価格は都市部のように、交通アクセスが良好で各種の商業設備や病院などの医療機関や各種学校や塾などの教育機関が充実しているので住みやすい点が評価されて、相場額は高くなる傾向があります。しかしいざ自宅を処分するなどの場面になると、不動産の評価価値と市場価値には違いがあることに気づかされることになります。そのため想定していたよりも、安い値段での売却を甘受しなければならない事態に遭遇する可能性が否定できません。そこで不動産の評価価値と実勢の市場価値の、それぞれの特徴や傾向を御紹介します。

不動産の評価価値とは、何らかの指標により対照不動産の経済的価値を鑑定評価することで算出される価額のことです。主要な指標には、収益還元法と直接還元法、これらのほかにDCF法などがあります。収益還元法とは、対象不動産が将来にわたり生みだすであろうと予測される純利益の総和を算出することで、対象不動産の収益価格を求める方法です。収益還元法は賃貸用不動産の価格を求める場合に、特に有効です。しかし参考になるのはあくまで過去の運用実績になるので、肝心のデータの信頼性を厳密に精査することが求められます。
直接還元法は、通常1年間の純利益を還元利益で割ることで、100を乗じて収益還元価格を算出する方法です。例えば固定資産税や保険料・修繕費などのコストをのぞいた純利益を、想定した還元利率で割ることで求められます。例えば150万円を還元利回り5%だとすると、150万円/0.05で3000万円となるわけです。
これらの不動産の評価価値に対し、市場価値は1物3価などと呼ばれる方法が採用されています。代表的な対象不動産の市場価値を測る指標には、国税庁が公開している路線価、国土交通省が毎年発表する公示地価、市町村が三年ごとに評価替えしている固定資産税評価額などがあります。例えば路線価は相続税算出の参考などのために公表されますが、あくまで道路に面している土地の1平米あたりの価格を示したものです。しかし道路に面していない土地や、取引の少ない地方においてはあまり活用できないことになります。とはいえ実際の不動産の市場価値は、公的機関が発表する各種の指標を参考にしながら、対象不動産が所在する地域の需給関係により実勢価格は、一定のレベルに収斂していくことになります。市場の需給関係も加味されるため、市場価値と評価価値にはしばしば乖離が見られるわけです。